コロナの検査の話(感度・特異度を中心に)

5月 8, 2020 診療情報

コロナの検査の話(感度・特異度を中心に)

あくまで院長の個人的感想ですが、皆さん検査や薬が気になってしょうがない方が多いような印象です。かくゆう私も大学では臨床検査医学講座に所属しており、最近まで日本臨床検査医学会に所属していました。

専門ではないことをお断りしたうえで、新型コロナウィルスのRT-PCR検査と、以前より使っているインフルエンザ抗原迅速検査キットについて、その有用性のお話をしてみたいと思います。

*現在当院ではコロナウィルスの検査は一切行っておりません。

コロナのPCR(RT-PCR)検査は、報道されていることからの一般的なお話で、感度(コロナ感染者のうち検査で陽性を出す割合)が70%程度といわれています。特異度(コロナに感染していない人の検体を正しく陰性と出す割合)の話はしっかりとした数字が見当たりませんが、コンタミネーション(感染者の唾液などが一部混入してしまう検体採取の問題)や死菌(すでに活性を失ったウィルス)までを拾い上げてしまう特性上、特異度は絶対に100%にはならないことを考慮し、

仮に感度70%、特異度99.9%として、例題を解いていきましょう。

先日、慶応大学附属病院の予定入院患者のコロナPCR陽性率が6%と報道されていました。都心に比べ多摩地域は流行が少ないがそこからさらに時間が経過したことなど考慮し、仮に感染者が5%いる設定にします。人口10万人中に5000人感染者がいて、そのうちの95%・4750人が不顕性感染(症状がない人)とします。残りの250人が症状がある人となりますが、立川市と国立市を足して約25万人のうち現在の累積陽性者が20人程度なのでかなり多い設定になります。

この中で症状の有無にかかわらず無作為に10万人にPCR検査を行った場合

感染者5000人のうち陽性は3500人、偽陰性は1500人

非感染者95000人のうち偽陽性95人、陰性94905人

陽性率は3.595%・陽性反応的中率97.4% 陰性率は96.405%・陰性反応的中率98.4%となります。全体の精度は98.4%です。楽天市場で自由に検査ができるように売り出される予定でしたが、感度が良くないのにすごくいい数字に見えますね。

でも感染者の30%・全体の1.5%の偽陰性の方は野放しで、ほかに感染させるので感染の収束に役立つのかといわれるとはなはだ疑問です。また、検査を受けたかたの約0.1%が感染していないのに感染者にカウントされてしまい、感染報告数は実数より1405人も少なく見積もられてしまいます。

毎日、新たな感染者が何人と報道されていますが、検査で陽性に出た人数が多かろうが少なかろうが、実際の感染者を正しく反映した数字にはなりえないのがよくわかります。また、見逃した人がほかの人に感染させないよう接触飛沫感染防止の社会的距離の確保、手指消毒、休校や大規模イベントの中止措置は絶対的に必要なことがわかります。

さて、先日から抗原検査の話が報道され始めてきております。実際に4月末に富士レビオという会社が製品を完成させ認可申請を済ませているようです。原理はイムノクロマト法というもので、インフルエンザの検査も同じ方法のものが流通しており、比較的なじみの深いものです。当院では国立市医師会休日診療センターと同じクイックナビFlu2®を採用しています。添付文書からは鼻腔ぬぐい液のインフルエンザAでの感度94.8%、特異度98.4%となっていますが、十分なウィルス抗原量がない感染初期では感度がかなり落ちることが知られています。また、抗原量を十分多くしたテスト検体では100%の感度になることが記載されています。

つまり、イムノクロマト法による抗原検査は抗原量に依存して感度が変わるようですので、インフルエンザに比べ検出の難しいコロナウィルスでは30%程度まで感度が落ちるのではないかと思われます。

先ほどと同じく感度30%、特異度98.4%の設定で、5%の感染者のいる集団10万人に一斉に検査を行った場合を計算してみましょう。

感染者5000人のうち陽性1500人、偽陰性3500人

非感染者95000人のうち偽陽性1520人、陰性93480人

陽性率は3.02%陽性反応的中率49.7%、陰性率96.98%陰性反応的中率96.9%となります。陽性反応がでたとしても、一斉にやったら全くあてにならない感じですが、これまでの知見でコロナを疑うCT像や、採血でのCRP陰性などのウィルス性を疑う所見から、ほかの検査を先に実施したうえで8割がたコロナを強く疑う方に絞って検査をした場合は、また違った結果で見えてきます。

10000人のコロナっぽい肺炎患者(うち8000人が本当のコロナ)に対し、15分以内に結果が出て、陽性が2432人(24.32%)でます。副作用のほとんどない薬が使えるとしたらさっさと使い始めることができ重症化を予防することが期待できます。しかし、うち32人は薬を使う必要がなかった人たちです。この方たちも、薬の効果を見てから次の手を打つことはあまり問題ではなさそうです。残りの7568人は陰性なのでPCRの結果を待ちますが、ほかの検査で強く疑っており厳重観察が必要で、ほっておかれることはありません。PCRが少し感度が良くなっても30%は見逃しが出るので、強く疑うのならやはりPCR陰性でもコロナの治療が行われるかもしれません。

もう一つの仮説として、コロナウィルスの唾液中の抗原量が多い人ほど人に感染させるとした場合、コロナ感染者の8人に一人12.5%程度しか感染させていないという事実もあるようで、また、発症前2日から発症後数日が感染させる時期との報告がありますので、発熱後速やかに検査ができて数分で結果がみられるキットをさっさと使って抗原量が多い時期に検査ができ、ほかに感染させる人を見分けることができれば、イムノクロマト法の特性からはもしかすると感染を広める人に限っては高感度で見つけられるかもしれません。この仮説がもし正しいようなら、感染拡大を抑え込む有効な武器になる可能性が十分ありうると思います。

さて、今回の計算は推論に基づくものであり、思いつくままに書いてみたので検証も行っておりません。臨床試験の仮説としては面白いと思うので、検証してくれる人がいるといいですが…。とりあえず抗原検査に関しては発売後速やかに手に入れられるよう努力しようかなと思っております。

院長

投稿者:院長

松永宏明 内科医 超音波専門医 1974年鹿児島県生まれ 1999年自治医科大学卒業