疑わしい人は全員隔離だ!?

って言わないでくださいね。

前回と同じ設定で、東京都民のうち10万人が真の感染者である設定で、感度70%、特異度99.9%という、特異度を厳密にした設定のPCR検査を、感度が低いのを補うために5回陰性が出るまで全員に続けるという設定でシミュレーションしてみましょう。

1回陽性になったら隔離対象として、陰性者は2-5回目の次のステップに進んでいくと、1回目83900人、2回目34886人、3回目20172人、4回目15748人、5回目14411人の陽性者が出て、243人を見逃します。

見逃しは0.243%で、99.757%の陽性者は隔離が可能でしたが、隔離を受ける対象となった方は169117人という結果でした。このうちの真の感染者は59%、残りの41%は実は感染していません。

もちろん本当は感染していないのに隔離されてしまった人には何も起きないので既感染にはならず、無症状で隔離されてしまったのであればこの結果では1か月後に抗体検査をしてしっかり免疫が付いていたかを確認する必要が出てきます。この確認を行わずに、自分は今後感染することはないと考えてしまった場合、とても困ったことが起きてしまいます。

さて、PCRの感度・特異度は変更することができるのでしょうか。答えはYesです。PCR検査は、増幅という過程を何度も繰り返して、ウィルスの一部のRNAを倍々に増やしていき、一定以上の検出ができた時に陽性とでます。この増幅の回数をCT値(Threshold Cycle)といいます。増幅回数を多くすれば感度は上がるかもしれませんが余計なものも感知してしまうリスクが上がり特異度が下がります。逆に増幅回数を減らせば感度が減り特異度は上がります。

検査機関により、この増幅回数は違っており、どこが適切なラインかは独自判断となっていることが多いようです。国際標準に比べて日本では感度をあげるために5回ほど多く増幅をしているところが多く、さらにイギリスの方が日本より増幅回数を増やしている検査機関が多いようです。

上記はシュミレーションですが、感度に振りすぎても、特異度に振りすぎても、どう頑張っても真の感染者とPCR検査陽性をぴったり合わせることは技術的に難しいようです。

やっぱりPCR検査だけでは正確な診断が得られません。臨床の立場としてはこんな正診率では困ってしまいます。もちろんその被害を被るのは患者さんたちであることは言うまでもありません。

コロナウィルスは、どんなに頑張っても消えない理由とPCRに頼った感染者の発掘では感染報告数は増えるものの感染実態に即したものにはなりえないことを理解の上、新しい生活様式による感染拡大防止に努めていく必要性についてご理解いただければと思います。

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